PACS更新の進め方
PACSは、導入後も画像データの増加や院内システムの変更、ハードウェア・OSの保守終了などに合わせて更新を検討する必要があります。しかし、PACSの更新は製品を入れ替えるだけでは完了しません。
過去画像を安全に移行できるか、電子カルテやRIS、各モダリティとの連携を維持できるか、切り替え時も診療を継続できるかを確認する必要があります。本記事では、PACS更新の進め方と製品を比較する際のポイントを解説します。
PACSの更新を検討する
タイミング
保守終了や容量不足は
更新検討のサイン
サーバーや端末、OSの保守終了が近づくと、故障時に部品を確保できなかったり、セキュリティ更新を受けられなかったりする可能性があります。現在の保守期限とメーカーの対応範囲を早めに確認しましょう。
画像データの増加による容量不足や表示速度の低下も、更新を考えるきっかけです。CT・MRIなどの検査件数、年間の画像発生量、保存期間を整理し、現在の容量だけでなく次回更新までに必要となる容量を見積もることが大切です。
現在の業務にPACSが
合わなくなったとき
読影時の画像表示が遅い、過去画像を探しにくい、他院への画像提供に手作業が多いといった課題がある場合、保守期限を待たずに更新を検討する余地があります。小さな不便でも、毎日繰り返されれば現場の負担になります。
診療科やモダリティの追加、施設間連携、遠隔読影など、導入時にはなかった運用が必要になることもあります。現在のPACSで対応できるかを確認し、追加改修とシステム更新のどちらが適切かを比較しましょう。
PACS更新の前に整理しておきたいこと
接続機器と保存データを棚卸しする
最初に、PACSと接続している機器やシステムを一覧化します。電子カルテ、RIS、レポートシステム、画像診断装置、画像参照端末に加え、DICOM画像以外の動画やPDFを保存している場合は、その種類と保存場所も確認します。
旧システムの設定や担当者の記憶だけに頼ると、更新後に必要な連携が抜けるおそれがあります。「どの機器から何を受信し、誰がどの端末で利用しているか」を業務の流れに沿って整理すると、必要な要件を把握しやすくなります。
現場とシステム担当者の要望を
まとめる
PACSを利用する放射線科医、診療科の医師、診療放射線技師、看護師、医事・情報システム部門では、重視する点が異なります。表示速度や操作性、比較読影、レポート連携など、職種ごとの課題をヒアリングしましょう。
院内担当者は業務を理解し、ベンダーはシステム構成を理解しています。双方が情報を共有できる検討体制を作り、要件、役割、決定事項、進捗を記録することで、認識のずれや仕様漏れを抑えられます。
PACS更新で比較したい
7つのポイント
1.クラウド型とオンプレミス型
オンプレミス型は院内にサーバーを設置するため、自院の運用に合わせて構成しやすい一方、機器の設置場所や保守、将来の更新を考える必要があります。クラウド型は院内設備を抑えやすいものの、通信環境や障害時の運用確認が欠かせません。
提供形態だけで優劣を決めず、画像表示の速度、院外からの利用方法、通信障害時の参照範囲、バックアップ、費用体系を比較します。自院の規模や診療体制に合った構成を選ぶことが重要です。
2.過去画像と関連情報の移行方法
更新時には、旧PACSに保存された画像を新しいPACSでも正しく検索・表示できるようにします。移行対象となる画像・DICOMタグ・患者IDを確認し、移行できないデータがないか事前に調査しましょう。
全データを移行する方法のほか、一定期間だけ移行し、古い画像を旧システムで参照する方法もあります。ただし、二つのシステムを併用する期間や保守費用が発生するため、移行に要する時間と総費用を含めて判断します。
3.電子カルテ・RIS・モダリティとの連携
PACS単体の動作だけでなく、電子カルテから患者情報を引き継げるか、RISの検査情報と画像を正しく対応させられるかを確認します。メーカーが変わる場合は、既存機器との接続実績だけで判断せず、実機による接続試験が必要です。
患者ID、検査日、モダリティ、施設コードなどの扱いがシステム間で異なると、画像を検索できない、別患者として登録されるといった問題につながります。連携先の各ベンダーを含め、調整範囲と費用負担を明確にしましょう。
4.画像表示速度と
ビューアの操作性
画像表示速度は、サーバー性能だけでなく、院内ネットワーク、画像容量、端末性能、クラウドとの通信方法にも左右されます。通常時だけでなく、複数の利用者が同時に参照する場面や過去画像を呼び出す場面でも確認します。
デモでは、自院で頻繁に扱う検査や比較読影の流れを再現しましょう。画像の並べ方、過去画像の呼び出し、計測、レポート連携などを現場担当者が実際に操作し、現在より作業が増えないかを評価します。
5.セキュリティと
障害時の診療継続
PACSには患者の医療情報が保存されるため、利用者認証、アクセス権限、操作ログ、通信・保存データの保護、バックアップなどを確認します。厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、公開時点の最新版を参照してください。
サーバーやネットワークが停止した場合に、どの画像をどこから参照できるかも重要です。代替端末やローカル保存の有無、復旧手順、連絡体制、サイバー攻撃を想定したBCPまで、導入前に具体的な運用を決めておきます。
6.更新作業と切り替え時の
停止時間
更新スケジュールには、要件整理、接続調整、データ移行、操作研修、リハーサルを含めます。データ量が多い場合や複数ベンダーとの調整が必要な場合は時間がかかるため、保守期限の直前ではなく余裕を持って着手しましょう。
本番切り替え前には、画像の受信・検索・表示、患者情報の一致、電子カルテからの起動、レポート連携などを確認します。切り替えが完了しない場合に備え、旧システムへ戻す条件と手順も決めておくと安心です。
7.導入後の保守・サポート体制
障害受付の時間、リモート対応と現地対応の範囲、復旧目標、定期点検、バージョンアップの扱いを確認します。夜間・休日も画像参照が必要な医療機関では、診療時間外の連絡先と対応内容が選定条件になります。
将来の容量追加や端末増設、電子カルテ更新時の再接続に必要な費用も確認しましょう。初期費用だけで比較せず、保守料、クラウド利用料、回線費、ライセンス、データ移行費を含む運用期間中の総費用で判断することが大切です。
PACS更新の基本的な流れ
現状調査から製品選定まで
まず、更新理由、現在の課題、接続機器、データ量、必要機能を整理します。そのうえで複数のPACSを比較し、要件への適合度、導入費用、保守体制を確認します。必要に応じてデモや現場担当者による操作評価も行います。
選定時には「対応可能」という回答だけでなく、標準機能なのか個別対応なのか、追加費用が発生するのかを確認しましょう。要件ごとの回答を同じ形式でそろえると、製品間の違いを比較しやすくなります。
構築・データ移行・稼働後の確認
製品決定後は、接続設定、端末設置、データ移行、操作研修を進めます。旧PACSを運用しながらデータを順次移行し、本番前に画像件数や患者情報の整合性を確認する方法も検討します。
稼働後は、表示速度や検索結果、連携状況、現場からの問い合わせを確認します。更新直後に見つかった課題を整理してベンダーと共有し、設定変更や操作説明で改善できる内容と、改修が必要な内容を分けて対応しましょう。
PACS更新で失敗しないためのチェックリスト
- 現行PACSの保守期限と更新理由を明確にしたか
- 接続している機器とシステムを一覧化したか
- 画像の件数、容量、種類、保存期間を確認したか
- データ移行の対象範囲と確認方法を決めたか
- 電子カルテ、RIS、モダリティとの接続試験を計画したか
- 現場担当者がビューアの操作性を確認したか
- 切り替え時の停止時間と代替運用を確認したか
- 障害時の連絡体制と復旧手順を確認したか
- 初期費用だけでなく運用期間中の総費用を比較したか
- 将来の増設や他システム更新への対応を確認したか
自院に合ったPACSを比較しよう
PACS更新では、現在の機能をそのまま置き換えるだけでなく、今後どのような診療・読影環境を作りたいかを明確にすることが大切です。表示速度、連携、保存容量、院外利用、保守体制など、自院で重視する項目の優先順位を決めて比較しましょう。
このサイトでは、病院・クリニック向けと健診施設向けに分けて、PACS製品の特徴を紹介しています。更新候補を探す際は、自院の用途に合う製品を確認し、複数メーカーへ具体的な要件を伝えたうえで提案を比較してください。

